野良犬通りで会いましょう 第一話 ■「 天使の給料日 」



はゆらゆらと曖昧にふき、空は不機嫌に曇っている。

そんなとある日の午後、ビルの屋上に一つの人影があった。



「・・・・・した・・・・」



うつろな目をした黒髪の青年は、ふらふらと屋上の縁まで足を動かす。

羽織っている空と同じ灰色のパーカーが風にはためいた。



「・・・落とした・・・」



拳を握り、唇を噛みしめ、虚空を睨み付けて絶望に満ちた声で青年は叫んだ。

「給料落としたーーーーーーーーーーーーー!!!」





       第一話  「天使の給料日」





「あっはははははははははは!!!!!!!」



息を荒げてうなだれている少年の肩に、一羽のカラスがとまった。



「いやぁ、まいったねこれは!一ヶ月分の給料を落とすなんて、今時B級映画の主人公でもしないだろう?」



しゃべるカラスに驚きもせず、青年は淡々と言葉を返した。



「っせーよゾフィ!!!笑い事じゃねーんだよ・・・」



「おや、なぜだい?」



すると今までものぐさな雰囲気だった青年の言葉に熱意が含まれた。



「今日はっ!BMUPのNEWアルバムの発売日なんだよ!!」



「CDなんていつでも買えるじゃないか。」



「ちげーよ俺が欲しいのは初回限定版のアルバムなんだよ!!!!」



ああそれもそうだけどあと一ヶ月後までのメシ代どうしよう・・・・と

青年はぼやく。



「もうくまなく町中を探したんだ、満足しただろう?家へ帰った方がいいんじゃないか?」



「はぁ、そーすっか・・・っとぉ?」



眼下の町を見下ろした青年は眉をひそめてつぶやいた。



「おいおい・・・人ん家の目の前でナニしてくれてんだか・・・」



「どうやら家へ帰る前に一仕事ということになりそうだね」



「っし、いっちょいきますか!」



気合いを入れたようにほおを叩くと、青年はそのままバンジージャンプのように両の手を広げて・・・・・







                        屋上から飛び降りた