野良犬通りで会いましょう 第二話 ■「 だれか 」



い こわい  こわいこわい怖い



 何で  どうして 私



痛い 足が お腹 止まらない  血 



やだ  それでも あそこに戻るくらいなら いっそ・・・



やだ   いやだいやだ!!!!!



たすけて 言えない  だって 私は・・・





         第2話「だれか」





「はっ・・・っ・・・・はっぁ・・・・」



夕暮れに染まる路地裏を、一人の少女が走る

腰まで届く金色の髪を振り乱し、海と同じ青色の目を恐怖という感情で染めながらも、ひたすら走る。

「まてやこらぁ!!!!!!」



「観念しろやこのアマ!!!!」



背後から聞こえる男たちの罵声。

簡素な手術衣は、少女の腹部からにじみ出る血で真っ赤に染まっていた。



「はあっ・・・はっ・・・・っ!!」



不意に足を止める少女。目の前には立ちふさがる壁。



「(っ行き止まり・・・・・!!)」



「ちっ、手間かけさせやがって・・・」



ぎり、と奥歯を噛みしめた。自分がもう逃げられないのはとっくに分かっていた。

それでも、諦めきれなかった。一瞬でも目の前にあった





        「自由」という言葉を





「・・・・・・・れか」



「あ?なんかいったか?」



「だれか・・・・」



だから叫んだ。無駄だと分かっていたからこそ、少しでも夢を見たくて。



「・・・・・・っだれかああああ!!!」











「おいおい、なーにやってくれてんだ?人ん家の目の前で。」





さも当たり前かのように背後から響く一つの声



「あ?だれだてめぇ??」



まだそれが信じ切れない少女は、虚ろな瞳に青年の影をぼんやりと映す。



「・・・・だれだ、ねぇ・・・・」



青年は困った様に頭をかくと、あまりにも場違いな言葉を発した。













      「あぁ、俺、天使。」